遺産分割に関してよくある相談ケース
遺産分割協議とは
相続は、遺言がある場合にはそれに沿った解決を目指します。遺言がない場合には、遺産分割協議によって分割方法を決めます。
遺産分割協議は相続の権利がある相続人が行います。相続人の範囲は法律で決まっています。被相続人(亡くなった方)の全財産を明らかにし、それぞれの相続分を遺産分割協議で決定し、その結果を遺産分割協議書に記載して、全員が署名・押印して終了します。
民法には被相続人との続柄によって法定相続分が規定されています。遺産分割協議では全員が納得すればこの割合に縛られる必要はありません。たとえば、夫が亡くなり妻と子ども2人が相続人となった場合、法定相続分は妻が2分の1、子どもが4分の1ずつ相続することになっています。その割合で分割してもいいですし、協議の結果、「お母さんが全部相続すればいいよ」という決定もできます。その際、長子が「車だけもらっていいかな」というような個別の相続も可能です。
全員が納得するなら遺産分割協議書など必要ないのではと思われるかもしれません。しかし、土地や建物の登記変更、預貯金口座の名義変更など、相続が行われたことを証明する書類がないとできない手続がたくさんあります。そのため、遺産分割協議書が必要になります。
遺産分割協議がまとまらない
遺産分割協議が紛糾して争いとなってしまうケースも少なくありません。その原因は多種多様ですが、以下のようなケースが多く見受けられます。
- 相続人の一人が被相続人の財産の情報を開示しない
- 身勝手な遺産分割方法を主張して譲らない相続人がいる
- 相続財産のほとんどが不動産で公平な分割が難しい
- 相続財産に多額の借金があって、どうしたらいいか分からない
- 被相続人の生前に多額の贈与を受けた相続人がいる
- 被相続人に後妻、非嫡出子、養子などがいて、相続関係が複雑である
- 分割財産が多額で相続税が課税されるため、合意が取れない
- 法律上、何の権利もない親族が遺産相続に口を出してくる
遺産分割協議が調わなかった場合、家庭裁判所での調停、それでも調わなかった場合には審判や判決という流れで進んでいきます。
遺産分割協議に関して弁護士へ依頼するメリット
財産に関する話し合いは非常にデリケートなものです。親族同士であるからこそ余計にストレスがかかることもあるといいます。感情的なもつれから協議がまとまらず、数年経っても争いが続いていることもめずらしくありません。
じつは相続においては「金持ち喧嘩せず」です。裁判所で争われるケースで遺産額5,000万円以下の事件も多くあります。「ウチは財産が少ないから大丈夫」とはいえません。とくに公平な分割が難しい土地や家屋などの不動産が相続財産に含まれていたりすると、協議が紛糾することもしばしばです。
第三者であり法律に精通している弁護士が間に入ることで、相続に関する無用な揉め事やトラブルを未然に回避することができます。弁護士の的確なサポートとアドバイスを活用してください。
財産に関する話し合いというストレスから解放される
弁護士にご依頼いただいた場合、弁護士が依頼人に代わって遺産分割協議に参加して親族の皆様と交渉を行います。依頼人のお考えは弁護士が皆様に伝えますので、相手と直接交渉するというストレスをほぼ感じずに遺産分割を終えることができます。
スムーズな相続のための最善の提案ができる
ま法律の専門家である弁護士は、裁判になった場合の司法判断をおおむね想定することができます。それを踏まえて相続人の皆様に最善のご提案ができるため協議が客観的な話し合いになりスムーズに結論に至るケースも数多くあります。
有利な条件で協議を進められる
法定相続分による相続で相続人全員が納得すればそれで問題ないのですが、特別受益(遺贈、死因贈与、生前贈与など)がある場合や、寄与分(被相続人の財産を増やすあるいは減るのを防ぐことに協力した人がいる場合に認められる)がある場合など、それをどう扱うかが問題になることがあります。
弁護士が代理をすると依頼人が不利にならないよう、あるいは有利な条件で終結するよう遺産分割協議を進めていきます。
遺産分割が終了するまでサポートが受けられる
遺産分割協議が調わなかった場合、家庭裁判所での遺産分割調停、それも不調に終わると遺産分割審判又は訴訟で判決という流れになります。書類作成等は行政書士や司法書士なども請け負うことができますが、調停・審判,訴訟の段階で依頼人の代理ができるのは弁護士に限られます。遺産分割協議から遺産分割調停・審判,訴訟にいたるまで、弁護士はすべての段階で的確なサポートをすることができます。
遺産分割後のトラブルを未然に防ぐことができる
遺産分割協議が調ったら遺産分割協議書を作成し、相続人が合意内容を確認します。遺産分割協議書に不備があると合意が無効になったり、トラブルが再燃したりする可能性があります。弁護士が作成することで、未然に遺産分割後のトラブルを防ぐことができます。
遺産分割協議による分割について
遺産分割協議では、どの相続人が、何の財産を、どのくらい相続するのかを決めます。
対象となる相続財産は経済的に価値のあるものすべてです。被相続人の借金や住宅ローン、未払いの税金など負の財産も相続財産に含まれます。
協議で合意が成立したら合意内容を記載した遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印します。遺産分割協議書の原本は1通作成するだけでもよく、必ずしも相続人の人数分だけ用意して相続人それぞれが持っている必要はありません。不動産などの移転登記の際に必要となりますので、それぞれの相続人において遺産の移転登記が必要なケースでは、それぞれに原本を用意しておいたほうが便利です。
遺産分割調停・審判による分割について
遺産分割調停とは
遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停の申立を行うことができます。
調停委員会(裁判官と調停委員2人の計3名)がそれぞれの相続人から個別に聞き取り調査をし、意見の調整を行って合意を目指す制度です。
遺産分割調停の申立
1人もしくは何人かの相続人が他の相続人全員を相手方として申し立てます。相手方の1人の住所地の家庭裁判所あるいは当事者が合意して決めた家庭裁判所に申し立てます。
申立には、所定の費用がかかります。申立書のほか、相続人・被相続人の戸籍謄本等、相続人全員の住民票、遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書、預貯金通帳の写し等)などが必要になります。
遺産分割調停の流れ
申立後1ヵ月〜1ヵ月半で第1回の調停期日が決定します。期日では、裁判所の調停室で調停委員会がそれぞれの相続人(あるいは代理人)から事情を聞き、妥当な結論に歩み寄れるよう調整します。相続人は論点について次回期日までに検討してくる形を取ります。およそ1ヵ月ごとに期日を重ね、半年から1年程度をかけて調停成立(合意形成)を目指します。
調停調書
分割案がまとまると調停調書が作成され、これを元に相続を進めます。調停調書は確定判決と同じ効力を持っていて、従わない相続人に対しては強制執行などによって調停で合意した相続を実現することができます。
遺産分割審判とは
調停を重ねても当事者間で合意が成立しない場合、または相手方が期日に出席しないような場合には調停は不成立になります。調停が不成立になると自動的に審判手続に移行します。裁判官が必要な審理を行った上で、審判をします。
審判に不服がある場合には、審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内に即時抗告という手続を取ることができます。上級裁判所に対して審判の取消変更を求めるものです。